作り手の好奇心と受け手の好奇心が交わる市場

JR有楽町駅にほど近い丸の内仲通り沿いに、その店はあった。「有楽町micro FOOD&IDEA MARKET」という名の通り、ちょっとした美味しい食べものと、ちょっと目新しいモノゴトが全国から集まる市場のような店には、月に約2万人もの人が訪れた。「有楽町micro FOOD&IDEA MARKET」がオープンしたのは2019年。
有楽町は、もともと百貨店や劇場に非日常を求めて老若男女が闊歩する街だった。どんなステキなものに出会えるだろうか、そんなワクワクを胸に人々が集まる街に、次世代のワクワクと出会える場所を。日常の中で特別な何かに出会える、そんな場所を作ろうと誕生したのが通称「micro」だった。

様々な人・アイデア・文化・食に出逢える場所に

JR有楽町駅にほど近い丸の内仲通り沿いに、その店はあった。「有楽町micro FOOD&IDEA MARKET」という名の通り、ちょっとした美味しい食べものと、ちょっと目新しいモノゴトが全国から集まる市場のような店には、月に約2万人もの人が訪れた。「有楽町micro FOOD&IDEA MARKET」がオープンしたのは2019年。
有楽町は、もともと百貨店や劇場に非日常を求めて老若男女が闊歩する街だった。どんなステキなものに出会えるだろうか、そんなワクワクを胸に人々が集まる街に、次世代のワクワクと出会える場所を。日常の中で特別な何かに出会える、そんな場所を作ろうと誕生したのが通称「micro」だった。

これからスターになるヒトやモノゴトを、
有楽町でどう育てられるか?

本来なら、有楽町駅の近くという恵まれた立地でポップアップショップが開けるのは、すでに名が知られている、限られたブランドだけだったが、「micro」はダイヤの原石のような「micro stars」に光を当てる場所として、日本中の埋もれる宝を発信し続けた。
その縁から、日本各地から「地域の魅力を発信するイベントを開催したい」という依頼が舞い込んだり、大手のテナント業者から「自社のリソースでは実現できないが、ぜひチャレンジしてみたい企画」が持ち込まれたりするようになる。また企業の新商品発表会など、記者発表会にも多く利用されることになり、この場が発信元となって多くの新しいモノ・コトが世界に発信されていくようになっていく。

実証実験の場としての機能が、
新たな「ワクワク」を呼び寄せた

microの使命のひとつにテストマーケティング、実証実験の場がある。例えば顔認証システムによる決済の実験や、代替食品のみの食事メニュー営業など、まだなじみのないシステムや商品に人々がどんな反応を示すのか、具体的なデータを集める場として、多様な属性の人が訪れるこの場所が最適な空間だった。
通常ならいとわれる実験毎の複雑なオペレーション変更を、スタッフひとりひとりがこの施設のコンセプトに共感し「この実験がどんなに面白いものか」「このデータがどんなふうに今後に生かされるか」と、一緒にワクワクしながら乗り切っていく。
また来店客のその新しさを「煩わしい」というより「何が起こるのか?」と、そのワクワクに乗って一緒に楽しんでくれる。そうした店舗運営を施設計画時から徹底した。こういった確固としたコンセプトが、開店早々コロナ禍という不運に見舞われながらも、ここが月に2万人が訪れる施設へと成長した大きな理由だろう。

有楽町という街と、
そこで営まれるそれぞれの日常に「余白」を与えた

訪れる人々にとっては、実験に参加しているという意識はなく、ただ毎日ここでコーヒーを飲み、居心地のいい空間でちょっと仕事をしたり、新しいものに出会ったり、日常の楽しさが常にあるサードプレイスだったであろうmicro。「え、なくなっちゃうの⁈」という声から、「ちょっとぼんやりするのがルーティンだったのに」「帰宅前に一息入れる場所が!」といった、それぞれの日常になくてはならない店だったことがわかる。
しばらくは「有楽町microロス」に多くの人が悩まされるだろう。「舞台観た後はここに寄る決めてたのに」と、店がなくなったことを知らずに訪れた人が、張り紙を見てボーゼンとする姿も。

そしてこの店で過ごした時間を思い出して、誰かに語る。
「……ていう店があって」という「……」の中にどんな言葉が入るだろうか。
きっとそれは、その人がここで見つけたワクワクするものに違いない。そういう出会いの場であったことが、きっと多くの人の記憶に残っていく。店なきあとも、語られることで出会いはつながっていくのだ。